行政府並びに官庁
行政権と統帥権
広義の行政権は、狭義の行政権と統帥権からなる。
行政権は内閣が輔弼する。統帥権は大本営が輔翼する。統帥権については、第一義的には大本営の輔翼が行われるものの広義の行政権は内閣が輔弼するために最終的な責任は内閣が負う。
内閣制度
内閣は、首長たる内閣総理大臣および国務大臣で組織する。内閣構成員の半数は、帝国議会の議員としなければならない。
内閣総理大臣の氏名は、貴族院の議決、衆議院の議決、枢密院の議決で各機関が指名者を決定する。特に衆議院は、衆議院の議員の中から指名され、かつまた衆議院の議決では1名のみ選出されるため、衆議院の最大多数をしめる政党の党首が選出される。貴族院と枢密院では、衆議院のような制限がない。そのため、様々な人間を指名できるといわれている。現状では、貴族院は、政党や会派の党首や代表が選ばれ、枢密院では、政党の党首や在野の有能な紳士が選ばれている。
各機関の指名が終わった後に、内大臣が内閣総理大臣の推薦者を決定するために会議を開くこととなっている。この会議には、貴族院議長、貴族院副議長、衆議院議長、衆議院副議長、枢密院議長、枢密院副議長の6名が出席し、内大臣が議長役として各機関からの推薦者を勘案して、最終的には一人一票の投票を以って決定される。衆議院からの2名は衆議院での決議により1名を、貴族院と枢密院からは、決議時の候補者の票に比例して、選出される。衆議院の第一党の党首を2名が選び、貴族院及び枢密院からは1名を必ず衆議院の第一党の党首を選ぶこととなっている。この慣例を憲政の常道と呼んでいる。このため、4票が衆議院の第一党の党首に集まることになっている。その後、内大臣から報告を受けた天皇が、組閣の大命を発する。この際には、勅使が派遣され、勅使から組閣の大命が委任命令降ったことが伝えられる。大命が降下した場合は、大命を受けるかどうか対象者は宮城に奉答のため登城する。
国務大臣の指名は内閣総理大臣によって行われる。内閣総理大臣は組閣名簿を天皇に上呈し、国務大臣が登城して、内閣総理大臣、国務大臣及び副大臣は親任式を受ける。
行政権
内閣が行使する行政権について憲法は76条について一般行政事務のほかに次の事項を行うと定めている。
1.勅令の制定
勅令は、行政権の行使に関して発する命令である。命令は、法規命令と行政規則に分けられ、我が憲法上は両方を発することが出来る。法規命令とは、一般人民に新に新に権利を付与し、権利を制限し、義務を課し、義務を免ずる旨の法規を定めることをいうが、この法規を命令によって制定することは帝國議会の立法権協賛の原則に触れるため好ましくはない。行政規則というのは、行政機関の定立する規範のことを言うが、一般臣民の権利義務に直接関係しない、すなわち外部効果を伴わないものを言う。たとえば、行政機関の組織に関する定め(たとえば、外務省官制、司法省官制施行令、内務省官制施行規則)などがある。また、その目的、方法等に応じて、緊急命令、独立命令、委任命令、執行命令の四分類が存在する。
1−1.緊急命令
憲法14条の要件を満たすときに発布されるものであり、本来は帝國議会が開会中であれば法規命令に。「公共の安全を保持」するため、又は「公共の災厄を避くる」ため、且つ「緊急の必要」があり、「帝國議會閉會中」の場合にのみ発布できる。緊急勅令は、帝國議会の立法権に対する侵害ともとられかねないために、必要的場合に最小限の範囲で制定されなければならないと考えられている。さらに、緊急勅令案は、枢密院の事前審査を受けることとなっている。なお、緊急勅令の用いられる場合は、帝國議会の貴族院常置委員会制度の発足によって、緊急勅令案がこの常置委員会によって審議されることとなっている。この常置委員は枢密院の審査に加わるために、厳密な意味での緊急勅令は今のところ皆無である。
1−2.独立命令
これに属する命令は法律とは独立に天皇の大権によって定められる命令を言う。独立命令は、法規命令と行政規則に分けられ、我が憲法上は両方を発することが出来る。
法規命令としては、公式令がこれにふくまれ、そのほかには、官制および官吏令、栄典令、学制令および暦時令がある。
1−3.委任命令
委任命令は、法律において「命令を以て定める」などの記載を受けて発する命令である。委任命令は、勅令という形式のみではなく、省、府、院、庁令や委員会規則、都道府県令、市区町村令、及び条例などでも委任される。
1−4.執行命令
この命令は、法律を施行するための命令である。
2.法律の執行・国務の総理
帝國議会の協賛によって成立した法律案は、天皇による裁可の後速やかに公布されなければならない。これが執行の手続である。
内閣は行政権を補弼するが、その範囲は広範囲に渡り、立法権及び司法権に含まない権能は行政権であると解されている。この行政権のうち国家に関する事務については内閣が最終的には責任を負う。
3.外交関係の処理
外国に関しては、外務省官制によって外務省が主務官庁となっている。すなわち、帝国憲法第十六條にいう天皇の外交大権は、内閣総理大臣と外務大臣が輔弼の責任を負う。宣戦講和に関する問題は外交事項であるが、これは国家に関しての重要事項であるため、内閣などで審議される。特命全権大使などの外交使節団の長及び団員の選定に関しては外務省の主務事項である。外国の使節の接受は天皇が行うが、彼らに対するアグレマンは外務省が行う。
国賓の迎接に関しては、外交大権の一つとして外務省の主管とする説、内閣総理大臣を主たる責任者として外務大臣、外務省が補佐に回るという説、国賓の迎接は天皇が行うために天皇の事務を司る宮内省の主管とする説がある。実務としては、国賓の迎接の場合には21発の礼砲、宮中晩餐会の開催
4.統帥権の輔翼
内閣
情報局
法制局
内閣官房
内務省
警保院
内務省外局
外務省
在外公館
大蔵省
大蔵省外局
司法省
検察庁
司法省外局
兵部省
兵部省外局
文部省
文部省外局
農林水産省
経済産業省
経済産業省外局
厚生労働省
厚生労働省外局